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犬や猫の腫瘍ってどんなもの?知っておきたい腫瘍の種類と初期サイン

はじめに

近年、犬や猫の寿命が延びたことにより、加齢とともに「腫瘍」の発生率が高まっています。腫瘍は「できもの」とも呼ばれますが、その種類や性質はさまざまで、中には命に関わる深刻なものもあります。

「腫瘍=がん」と連想しがちですが、すべてが悪性(がん)というわけではありません。早期に発見して適切な対応をすれば、治療や管理が可能なものも多く存在します。

この記事では、犬や猫に見られる腫瘍の種類や、飼い主様が知っておくべき初期サイン、早期発見の重要性について解説いたします。

腫瘍とは何か?

腫瘍とは、体内の細胞が異常に増殖して塊になったものを指します。腫瘍には大きく分けて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2種類があります。

良性腫瘍

良性腫瘍は、周囲の組織に侵入せず、比較的ゆっくりと成長します。命に関わることは少ないものの、大きくなると生活の質(QOL)に影響することもあります。
代表的な良性腫瘍には脂肪腫(しぼうしゅ)や皮膚乳頭腫(ひふにゅうとうしゅ)などがあります。

悪性腫瘍(がん)

悪性腫瘍は周囲の組織に侵入・破壊し、血液やリンパを通じて他の臓器に転移することがあります。これが一般的に「がん」と呼ばれるものです。
進行が早く、命に関わる可能性が高いため、早期発見・早期治療が重要です。

犬や猫によく見られる腫瘍の種類

犬や猫にできる腫瘍は多岐にわたりますが、以下はよく見られる代表的なものです。

犬の腫瘍

  • 皮膚腫瘍:脂肪腫、肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)、皮膚乳頭腫など。
  • 乳腺腫瘍:特に避妊手術をしていない雌犬で多く見られ、悪性率も高い。
  • リンパ腫:リンパ節が腫れる血液系の腫瘍。全身症状が出やすい。
  • 骨肉腫:大型犬に多く見られる骨の悪性腫瘍。転移のリスクが高い。

猫の腫瘍

  • 扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん):鼻、口の中、耳などにできやすい悪性腫瘍。
  • 乳腺腫瘍:避妊していない高齢の雌猫に多い。猫では80〜90%が悪性。
  • リンパ腫:猫でも多く、消化器型や胸腔型などさまざまな型がある。
  • 線維肉腫:ワクチン部位や注射部位に発生することもある悪性腫瘍。

腫瘍の初期サインに気づくために

腫瘍は初期には症状が分かりづらいことが多く、早期発見のためには日々の観察が非常に重要です。以下のようなサインを見逃さないようにしましょう。

1. しこりや腫れ

皮膚の下に「しこり」や「こぶ」のようなものが触れる場合、良性・悪性を問わず腫瘍の可能性があります。特に大きくなる、硬くなる、赤みや出血がある場合は要注意です。

2. 食欲不振や体重減少

がんにかかると代謝異常が起き、急激にやせることがあります。食べているのに痩せていく場合は、内臓に腫瘍があるかもしれません。

3. 元気がない・動きが鈍い

運動を嫌がる、じっとしていることが多いなど、生活の中で見られる変化にも注意が必要です。

4. 傷が治らない

皮膚にできた傷やただれがなかなか治らない場合、それが腫瘍性の病変であることもあります。

5. 呼吸困難、咳

肺に転移した腫瘍や胸腔内の腫瘍では、咳や呼吸の異常が見られることがあります。

腫瘍の診断方法

腫瘍が疑われた場合、動物病院では次のような検査が行われます。

  • 視診・触診:しこりの大きさ、形、硬さ、位置などを確認。
  • 細胞診:針でしこりから細胞を採取し、顕微鏡で診断。一部の腫瘍では確定診断になる場合も。
  • 生検(せいけん):組織を一部切り取って病理検査を行い、確定診断をつける。
  • 血液検査:内臓の状態や腫瘍マーカーを調べる。
  • 画像診断(レントゲン、エコー、CT、MRI):腫瘍の位置や転移の有無を確認。

腫瘍の治療と予防

治療法は腫瘍の種類や進行度によって異なります。

治療方法

  • 外科的切除:可能であれば腫瘍を切除することで完治が期待できます。
  • 抗がん剤治療:進行がんや転移がある場合に用いられます。
  • 放射線治療:一部の腫瘍で使用可能ですが、施設が限られます。
  • 内科的管理:腫瘍の進行を抑える対症療法やサプリメントの使用など。

予防と早期発見のために

  • 定期健診:腫瘍は早期発見が命を守るカギです。年に1回、シニア期(7歳以上)は半年に1回の健康診断を。
  • 避妊・去勢手術:乳腺腫瘍の予防や発症率低下に効果的。
  • 生活習慣の見直し:栄養バランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理も免疫力維持につながります。

まとめ

腫瘍は犬や猫にとって決して他人事ではない、非常に身近な疾患です。特に高齢になるほどリスクは高まり、飼い主様がいかに早く異変に気づくかが、治療の結果に大きく影響します。

「しこりがあるけど元気だから様子を見よう」ではなく、「元気なうちに検査を受けよう」という意識が、ペットの健康寿命を延ばす第一歩です。

当院では、腫瘍の検査・診断・治療の相談を随時承っております。気になる症状がある場合や、健康診断をご希望の際はお気軽にご相談ください。