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【SFTS(重症熱性血小板減少症候群)をご存じですか?】~ダニ予防の大切さと身近な危険~

はじめに

近年、ニュースなどで「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」という言葉を耳にする機会が増えました。SFTSはマダニを介して感染するウイルス性の疾患で、人や動物に感染し、重症化することもあります。
特に動物を通じた感染事例も報告されており、私たち獣医療に関わる者だけでなく、一般の飼い主様にとっても無関係な話ではありません。

2025年6月、三重県のある獣医師の先生が、SFTSに感染した猫を診察された後に感染し、亡くなられるという大変痛ましい出来事がありました。このような悲劇が再び起きないよう、私たち動物病院からも正しい知識と予防策をお伝えしたいと考えています。

SFTSとは?どのような病気?

SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は、マダニが媒介するウイルス感染症です。
SFTSウイルスは人に感染すると、発熱、嘔吐、下痢、頭痛、筋肉痛、血小板や白血球の減少などの症状を引き起こし、重症化すると死亡することもあります。日本では2013年から感染例が報告され、特に西日本を中心に発症が確認されています。

ペットが感染することもあります

犬や猫もSFTSウイルスに感染することがあり、特に野外に出る機会の多い猫や、狩猟本能の強い個体では感染リスクが高まります。
感染した動物は発熱や元気消失、食欲不振、黄疸、出血傾向などを示すことがあり、SFTSウイルスを保有している可能性のある動物の体液や分泌物から、人間が感染する例も報告されています。犬で致死率44%、猫で致死率59.7%、人でも致死率20%前後と言われています。

獣医師が感染して亡くなられた事例について

2025年6月、三重県内の動物病院でSFTSに感染した猫を診察した獣医師が、その後ウイルスに感染し、数日後に亡くなられるという非常に残念なニュースが報道されました。この件は私たち獣医療関係者にとっても大きな衝撃であり、改めてSFTSへの警戒と予防の徹底を意識するきっかけとなっています。

ご遺族や関係者の皆さまには心からの哀悼の意を表しつつ、こうした現実があることを飼い主様にも共有することで、今後の感染リスクの軽減に努めたいと思います。

SFTSを防ぐためにできること

1. ダニの予防が最重要

SFTSはマダニが媒介するため、マダニに咬まれないことが最大の予防です。犬や猫にはスポットタイプや飲み薬によるダニ予防が最も有効です。お薬には月一回のものや三か月持続するタイプもあります。
特に屋外に出る猫や、草むらで散歩することが多い犬には、継続的な予防が大切です。

2. 外出時の注意

草むらや藪の多い場所にはマダニが潜んでいます。散歩後はペットのブラッシングや皮膚チェックを行うようにしましょう。
ペットだけでなく、人間も長袖・長ズボン、帽子などでしっかりと肌をガードし、帰宅後には全身をチェックしましょう。

3. 発熱や元気消失などの症状が見られたらすぐ受診

ペットに元気がない、発熱している、出血しやすくなっている、などの症状がある場合、すぐに動物病院を受診してください。早期の診断と対応が非常に重要です。

飼い主様へ伝えたいこと

「うちの子は室内飼いだから大丈夫」「去年予防してたから安心」などと思われる方も多いかもしれません。しかし、マダニは知らないうちに人の衣服などに付着して家の中に侵入してくることもあります。
わずかな油断が、ペットやご家族の健康に深刻な影響を与えることがあります。

当院では、ダニ予防薬の処方はもちろん、日常的なケアや外出時の注意点など、飼い主様のライフスタイルに合わせたアドバイスを行っています。

まとめ:SFTSの脅威から大切な命を守るために

SFTSは人にもペットにも感染しうる重大な感染症です。特に最近は、動物から人への感染例も報告されており、私たち飼い主一人ひとりの予防意識がとても重要です。

当院の近郊でもSFTS感染の報告があり、他人事ではなくかなり身近にあるという認識を今一度持っていただきたい病気です。

大切なペット、そしてその家族全員が安心して過ごせるように、今一度「マダニ予防」について見直してみませんか?季節に関係なく予防が必要な場合もありますので、ご不安な方はいつでもご相談ください。

飼い主様へのお願い:外に出る猫を診察する際のご協力

近年のSFTS感染拡大に伴い、外に出る猫で、発熱・元気消失・出血傾向・黄疸などの症状が見られる場合、来院前に必ずお電話等でご連絡いただきますようお願い申し上げます。

該当する症状がある猫を直接診察する場合、SFTSウイルス感染のリスクを考慮し、当院スタッフの安全を確保するために防護服・手袋・ゴーグル・マスク等の完全防備で対応する必要があります。このような準備には時間と体制の調整が必要です。

安全な診療体制を整えるためにも、事前のご連絡は欠かせません。ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

また、ご来院の際にはキャリーケースでの移動や、ペットが外に出ないような工夫をしていただくことも、安全確保の一環としてご配慮ください。

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