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コラム皮膚科
ペットの耳が臭う?外耳炎の原因と予防法
はじめに
「最近、愛犬・愛猫の耳から嫌なにおいがする」「耳をしきりに掻いている」そんな様子に心当たりはありませんか?
高温多湿の季節は、犬や猫の耳の健康にとって特に注意が必要です。外耳炎(がいじえん)は、犬猫にとって非常に一般的な耳の病気のひとつで、放置すると慢性化や難治性の問題に発展することもあります。
このコラムでは、ペットの外耳炎の原因や症状、予防法について、専門用語を交えながらわかりやすく解説していきます。

外耳炎とは?
外耳炎とは、耳の外側(外耳)で炎症が起こる疾患を指します。具体的には、耳介(耳の外側部分)から鼓膜までの外耳道に炎症が生じる状態で、犬猫では特に多く見られる耳のトラブルです。
外耳炎は放置すると中耳炎(鼓膜の内側)や内耳炎(さらに内側の耳の部分)へと進行し、聴力の低下や平衡感覚の異常を引き起こす可能性があります。
犬・猫の外耳炎の原因
外耳炎の原因は多岐にわたりますが、以下のような要因が主に関与しています。
1. 高温多湿の環境
特に梅雨から夏にかけての高温多湿な季節は、耳の中が蒸れやすく、細菌や真菌(カビ)の繁殖に適した環境が整います。これが外耳炎のリスクを高める一因です。
2. アレルギー
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など、全身のアレルギー症状が耳の中にも現れ、外耳炎を引き起こすことがあります。慢性的な痒みや炎症が続くことで、耳の中のバリア機能が低下します。
3. 耳の構造
犬種によっては、垂れ耳(例:コッカースパニエル、ビーグル、ゴールデンレトリバー)や耳道が狭い犬(例:フレンチブルドッグ、パグ)では、耳の中が蒸れやすく、汚れがたまりやすい特徴があります。これにより外耳炎の発症リスクが高まります。
4. 外部寄生虫
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)などの寄生虫は、耳の中に住みつき、痒みや炎症を引き起こします。特に子猫や多頭飼育環境では注意が必要です。
5. 不適切な耳掃除
耳掃除のしすぎや強い刺激による傷が炎症の原因となる場合もあります。耳の健康を守るためには、正しいケア方法を知ることが重要です。
外耳炎の症状
外耳炎にかかった犬や猫は、以下のような症状を示します。
- 耳をしきりに掻く、頭を振る
- 耳の中が赤く腫れている
- 耳から悪臭がする
- 耳垢(じこう:耳の分泌物)が多く、色が茶色~黒っぽい
- 耳を触られるのを嫌がる、痛がる
- 頭を傾ける、平衡感覚の異常
症状が進行すると、中耳炎や内耳炎に進展し、重篤な場合には難治性となり、完治が難しくなるケースもあります。
外耳炎の診断と治療
外耳炎が疑われる場合、動物病院では次のような診断が行われます。
- 耳鏡検査(じきょうけんさ):耳の中を直接観察し、炎症の程度や耳垢の状態を確認します。
- 耳垢の顕微鏡検査:耳垢を採取し、細菌や真菌、寄生虫の有無を確認します。
- 培養検査:重症例や再発例では、原因菌を特定するため培養を行い、適切な抗生物質を選択します。
治療には、原因に応じた抗生物質や抗真菌剤、ステロイド製剤の点耳薬や内服薬が使用されます。耳道の洗浄も行われることがあり、飼い主様の協力が必要となるケースも少なくありません。
外耳炎の予防法
外耳炎は再発を繰り返すことが多い病気です。以下のポイントを押さえて予防に努めましょう。
1. 定期的な耳のチェックとケア
愛犬・愛猫の耳の中をこまめに観察し、赤みや汚れ、においに注意を払いましょう。適切な頻度で耳掃除を行いますが、やりすぎには注意です。
2. 適切な耳掃除
動物用の専用クリーナーを使い、綿棒ではなくコットンやガーゼでやさしく拭き取る方法がおすすめです。耳掃除の頻度は個体差があるため、動物病院で指導を受けると安心です。
3. 湿気対策
特に梅雨や夏場は、湿度管理を意識しましょう。エアコンや除湿器を活用し、ペットの耳の蒸れを防ぐ工夫を行います。
4. アレルギー対策
食事管理やアレルゲン除去、定期的な健康チェックにより、アレルギーの悪化を防ぎます。
5. 外耳炎になりやすい犬種の飼い主様へ
垂れ耳の犬種や耳道が狭い犬は、特に注意が必要です。定期的な診察や耳掃除、予防策の相談を獣医師と行いましょう。

まとめ
外耳炎は、犬や猫にとって非常に身近で、かつ再発しやすい疾患です。
高温多湿の季節には特に注意が必要であり、耳の健康状態を常に観察することが重要です。正しいケアと早期発見・早期治療が、ペットの快適な生活を守るカギとなります。
当院では、外耳炎の診断・治療はもちろん、耳の健康管理のご相談も承っております。愛犬・愛猫の耳に違和感を感じた場合は、お気軽にご相談ください。