ブログ
コラムその他
犬や猫がごはんを食べないのは何故?原因と考えられる病気について
動物病院では、ワンちゃんやネコちゃんがごはんを食べない、という相談が毎日のようにあります。
ワンちゃんやネコちゃんがごはんを食べないのには、次のような理由が考えられます。
- 病気で食べない
- 病気以外の理由で食べない
- お腹が空いていない
食欲不振の原因が病気かどうかを知るには、体重の変化を確かめてみてください。慢性病などの場合、体重の減少がみられます。
急性の病気で食欲がなくなる場合は、体重が減る前に深刻な状態になることがありますから、食欲と同時に、他の症状がないか、元気はあるかなど、併せて観察してください。
食欲不振の症状をチェック
次の項目は、ワンちゃんやネコちゃんがごはんを食べないときに、ご家族の方にチェックして欲しい項目です。動物病院での問診は、病気を疑うと同時に病気ではない可能性も考えながら行われます。
●元気がなくなった
ワンちゃんやネコちゃんの元気はどうですか?いつもどおりに動いていますか?ワンちゃんであれば毎日のお散歩での変化がないか、ネコちゃんであればお気に入りのベッドにいるか、トイレの様子はどうかをみてあげてください。
元気がないまま、ごはんを食べない日が続くようなら動物病院で相談しましょう。全く食べないなら、様子をみても良いのは1日から1日半までです。
●水を飲む量が増えた
ごはんは食べないけど、水はいつもよりも飲む。このような場合には注意してください。
水を飲む量の目安は、体重1kgあたり50ml未満です。仮に体重が5kgであれば、250ml未満ということになります。
水を飲む量が増えて食べる量が減った場合には、このような症状を特徴とするいくつかの病気について検討が必要です。
●吐く
ワンちゃんやネコちゃんが、ごはんを勢いよく食べて、短時間のうちに吐き戻すことがあります。その後もごはんを欲しがることがあり、このようなケースはほとんどの場合で健康上の問題はありません。
しかし、ごはんを食べないのに吐き戻したり、吐くしぐさを繰り返したりするようなら注意が必要です。1日に何度も吐く場合は、水も食べ物も与えないようにして、できるだけ早めに診察を受けるようにしてください。
●下痢をする
下痢が始まり、同時にごはんを食べなくなることがあります。さらに嘔吐をともなうことがあり、このような場合には、できるだけ早く動物病院へご相談ください。
食欲不振で考えられる病気は?
食欲がない、ごはんを食べない原因には、病気の場合も病気ではない場合もあります。ここでは考えられる病気を挙げますが、食欲不振ということだけでは、病気を絞り込むことは困難です。
動物病院での診察や検査、そしてその他の症状と併せて病名が決まります。
●炎症性疾患
- 細菌感染(歯周病、歯肉炎や子宮蓄膿症などを含む)
- ウイルス感染
- 真菌感染
- リケッチア感染
- 原虫感染
- 感染以外の炎症(免疫介在性疾患、腫瘍性疾患、壊死、膵炎)
- 不明熱
●消化管疾患
- 胃または腸疾患(胃腸炎や腸閉塞など)
- 嚥下困難(強い痛みが原因になるもの)
●代謝性疾患
- 臓器不全(腎臓、副腎、肝臓、心臓などの病気)
- 高カルシウム血症
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 甲状腺機能亢進症(猫)
●中枢神経疾患
大脳、小脳、脊髄に起こる病気(腫瘍、炎症、感染、代謝性疾患、変性性疾患など)
●腫瘍性悪液質
腫瘍性悪液質は、腫瘍疾患による合併症の一つで、食欲不振や体重減少がみられます。腫瘍性悪液質の場合には、原因となる腫瘍がわかっていることが多く、改善には腫瘍に対する治療が必要です。まれなこととして、肉眼的に検出が難しいほど小さな腫瘍が原因になることもあります。
●嗅覚障害
よくみられるのは、ワンちゃんよりもネコちゃんに多い、慢性的な副鼻腔炎です。他には、感染性疾患、外傷、脳疾患、先天的な異常、腫瘍性疾患そして加齢などがあります。
●神経的原因
神経的な異常には、抑うつや嗜眠(しみん)がみられることがあります。嗜眠とは、強い刺激には反応しても、その刺激が消えるとまた眠りにつく状態です。関係する病気には、外傷、中毒、脳血管障害、脳炎、代謝障害そして脳の腫瘍などさまざまなものがあります。
病気以外で食べない理由
●必要量を食べている
元気そうに見えるワンちゃんやネコちゃんが、期待するほど食べないことがあります。このような場合は、体重の変化を観察してください。もし体重が減らずに元気に過ごせていて、他に心配な症状がなければ、必要量を食べられているので心配ありません。
●好き嫌いがある
ご家族の中におやつをあげる方がいると、ごはんの前にお腹が満たされることがあります。また食欲がないときでも、おやつだけを食べることもありますから、好き嫌いなど心配なことは動物病院で相談してください。
●ストレス
ストレスが原因でごはんを食べないことがあります。ワンちゃんやネコちゃんのストレスは、特に環境の変化があったときに現れやすいものです。
- 引っ越し
- 家族や同居動物が増えたり減ったりした
- 留守番の時間が長くなった
- はじめての場所
- ペットホテルや入院
また、ストレスは、ネガティブなできごとだけが原因ではありません。
- ドッグランで長時間遊んだ
- いつもより長距離のお出かけや散歩
- ねこじゃらしで息が切れるほど遊んだ
- ボール投げを疲れるまで楽しんだ
このような場合には、慣れた環境に戻してあげることを優先してください。それでも食べない時間が長かったり、嘔吐や下痢がはじまったりすることもありますから、食欲が回復しなければ動物病院での診察が必要です。
まとめ
ワンちゃんやネコちゃんの食欲が落ちているとき、1日1食はいつも通り食べるとか、おやつなら喜んで食べるといった場合には、病気の可能性は低いことが多いです。ですが、これからも続くようなら一度病院にご相談ください。
また、1日中何も食べないときには、その食欲不振の原因として、病気を疑うことになります。
ワンちゃんやネコちゃんの病気で、食欲不振の症状がみられる病気は多岐にわたります。多くの深刻な病気では、主な症状と同時に食欲が低下することがほとんどです。
そのため、食欲がないことだけで、何の病気かを決定することはできません。
長引く食欲不振がみられるときには、その原因が、病気であったとしてもなかったとしても、動物病院で対処方法を相談してください。