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犬や猫が下痢をする原因とは?飼い主様が知っておきたい対策と予防法
動物病院に下痢で来院されるワンちゃんやネコちゃんは多く、多くの飼い主様が遭遇する症状かと思います。
下痢と言っても、下痢便の状態や症状が見られる期間・原因などにより、疑われる疾患や治療方法、緊急性は異なります。
下痢の種類や原因を知ることは、病院の受診のタイミングや予防対策に役立つでしょう。
下痢の種類と症状
ワンちゃんやネコちゃんの下痢の種類・症状には、次のようなものがあります。
●便のかたさによる分類
通常、便に含まれる水分量は70%ほどですが、80%を超えると下痢の状態になります。水分量により便のかたさが異なり、分類することができます。
水様便
水分量が90%を超えると水のような「水様便」と言われる状態になります。水下痢などと表現されることもあります。
軟便
正常な便よりもやや水分量が多く水様便ほど水状ではないものの、便を持ち上げると地面に便が付着するような便は「軟便」と言われます。
泥状便
軟便よりも水分が多く、水様便よりも水分が少なく便の形を保つことができない泥のような便を「泥状便」と言います。
●原因箇所による分類
消化管の不具合を起こしている場所によって、下痢の症状は異なります。
小腸性下痢
十二指腸、空腸、回腸はまとめて小腸と言われます。小腸に問題が生じると、便の回数は普段と変わりませんが、便の量が多く「メレナ」と言われる黒い便が見られることがあります。体重の減少が見られやすく、しぶりは見られません。
大腸性下痢
盲腸、結腸、直腸はまとめて大腸と言われます。大腸に問題が生じると、便の回数が増え血液や粘液が混じることがあります。また、何度も排便しようとしたり、排便体勢をとっても排泄されないような「しぶり」が見られたりすることがあります。便の量自体は通常と変わらないあるいは少なくなる傾向があり、体重の減少は起こりにくいです。
●症状の現れる期間による分類
急性下痢
1〜2週間以内に症状が落ち着く場合には、急性下痢と考えられます。下痢の治療に対する反応がよく、短期間で症状の改善が見込めます。一方で急激に悪化することもあるため、注意が必要です。
慢性下痢
主に3週間以上継続して見られる場合には、慢性下痢と考えられます。急性下痢で行うような一般的治療で改善しにくいため、さまざまな検査や治療が必要になります。
下痢の原因
下痢の原因はストレスや食事の内容など普段の環境によるものをはじめ、感染症や内臓疾患が関係していることもあります。
●食事の問題
ワンちゃんやネコちゃんは消化管が敏感なため、食べなれないフードやおやつを食べた時、特定の食材にアレルギーがある場合などに下痢が見られることがあります。
また、拾い食いや盗み食いをする癖がある場合には、傷んだ食材や有害なものを誤飲してしまうことがあるので注意が必要です。
●感染
特に免疫力の低い子犬や子猫、高齢の子は、感染症にかかりやすい傾向があります。
特にジアルジアやコクシジウムなどは、下痢の原因になりやすい寄生虫として挙げられます。パルボウイルスやジステンパーウイルスなどでも下痢が見られることがあり、重症化しやすく命に関わることが多いです。
●ストレス
環境の変化によりストレスが生じ、下痢を発症することがあります。
ストレスは個体差があり、性格が繊細な場合や高齢の子などは特にストレスによる影響が見られやすくなります。
原因と考えられるストレスを取り除くことで解決するケースが多いですが、強いストレスの場合には下痢以外にも脱毛や皮膚炎、嘔吐などの症状が見られることがあります。
●内臓の病気
内臓系の影響による下痢としては、膵炎や慢性腸症が挙げられます。
膵炎は軽度な場合には一時的な消化器症状のみで良くなることもありますが、重症化し短期間で命に関わるような状態に悪化することもある怖い疾患です。
慢性腸症は、下痢や嘔吐などの消化器症状が治療を行なっても長期間継続して見られる場合に疑われます。
その他にも慢性的に下痢が見られる場合には、腫瘍の可能性もあります。多くは高齢の子によく見られますが、画像検査で発見される場合や、画像検査で分からない場合には、内視鏡による生検などが必要になることもあります。
下痢の対処法と予防法
●下痢をしている際の対処法
元気や食欲に問題がなく便の回数が頻回でなければ、2、3日程度は様子を見ても良いかと思います。水をこまめに摂取し、食事はいつもよりも少ない状態で小分けに少量ずつ与えましょう。1日の間に下痢が何回も見られる場合や数日続いてしまう場合には、早めの受診をおすすめします。
●動物病院受診のタイミング
下痢や嘔吐が24時間以上続く
短時間で一時的なものであれば様子を見ても良い場合がありますが、1日を通して症状が見られる場合には、脱水の恐れがあるため病院の受診が望まれます。便や吐瀉物、撮影した写真などをお持ちいただくと診断の助けになります。
血液が混じる
血液が含まれる場合には、大腸性下痢の一過性の出血の場合もありますが、続くようであれば重篤な疾患も含まれているため注意が必要です。
食欲低下や元気がない
元気がない場合や食欲が低下する場合には、体調が悪いため早めの受診をおすすめします。
脱水が見られる
皮膚を軽くつまみ離した時に、皮膚の戻りが遅い場合や、目が落ちくぼんでいるなどの状態が見られる場合は、脱水している可能性があるため病院の受診をおすすめします。
繰り返し下痢が見られる
一時的に治療で良くなってもまた再発する場合には、根本的な原因が解決していない可能性があります。原因追求のため再度の受診が望まれます。
●予防法
食事管理
おやつや食事の変更をする場合には、少しずつ与えて慣らす形にしましょう。食物アレルギーなどがある場合には、アレルゲンになる食材は避け獣医師と相談すると安心です。
また下痢を起こしやすい体質の場合には、食物繊維などが豊富な消化の良いドッグフードやキャットフードを選ぶのも良いでしょう。
ストレスの軽減
気温の寒暖差や環境の変化などによりストレスを感じると、体調を崩しやすくなります。環境が変わる場合には、慣れるまでゆっくりと時間をかけて適応させるようにしましょう。
定期的な健康診断
ワクチン接種により感染症を防いだり、定期的に病院で健康診断を受けたりすることで、体の状態や寄生虫の有無などを確認することができ早期発見、早期治療につながります。
まとめ
下痢の原因や対処法を知ることで、今後愛犬や愛猫に下痢が見られたとき、慌てることなく病院を受診するタイミングを判断できるかと思います。
また、日頃から予防として食事の管理や環境整備、定期的な健診などを行うことで早期発見・早期治療につながりますので、ぜひ参考にしてください。