ブログ
コラム腫瘍
犬の皮膚の「しこり」が急に大きくなった!考えられる病気と「腫瘍」、治療法について解説
ワンちゃんの皮膚にできるしこりには、早く受診すべきものから経過観察でよいものまで様々な種類があります。このコラムでは、しこりの原因や、考えられる病気、しこりが急に大きくなった時の対応方法を解説します。
そもそも「しこり」って何?
しこりとは、皮膚や臓器などにできた「かたまり」や「できもの」の通称で、医学的には「腫瘤(しゅりゅう)」や「マス」と呼ばれています。
●しこりができる2つの原因
しこりは、その原因により以下の2つに分類できます。
○非腫瘍性
炎症によるものや、皮膚の組織が過剰に増殖したことが原因
○腫瘍性
細胞が腫瘍化し、無秩序に増殖したことが原因
●しこりを見つけたとき
しこりを見つけたら、まず以下のことをチェックします。
- 場所と数
- いつからあるのか
- 大きさに変化はあるか
- ワンちゃんの健康状態
しこりの見た目だけで飼い主様が原因を診断するのは難しいので、ワンちゃんの皮膚にしこりをみつけたら、1か月以内には動物病院を受診してください。
しこりで考えられる病気は?
ワンちゃんの皮膚のしこりで、よくみかけるものをご説明します。
●非腫瘍性病変
非腫瘍性のしこりは、加齢やワンちゃんの体のバリア機能が弱っているときにできることが多いです。
○皮脂腺過形成
四肢、体幹、まぶたにある皮脂腺が増殖し、カリフラワー状のしこりができます。中年以降のワンちゃんに多いです。
○深在性膿皮症
皮膚の免疫機能が低下しているときに、常在菌であるブドウ球菌が増殖し膿の詰まったしこりを作ります。脱毛やかさぶたも見られます。シェパードに好発する病気です。
○皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌の感染により、皮膚にフケがついたり、かさぶたやしこりを形成したりします。同居している動物や人にも移ることがあります。
●腫瘍性病変
腫瘍性のしこりは、細胞の増え方やその速さによって良性腫瘍と悪性腫瘍の2つに分かれます。悪性腫瘍と聞くと、心配になってしまう飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、悪性腫瘍でも早期に発見し適切な治療を受ければ完治するものもあります。
○良性腫瘍
良性腫瘍は、増殖がゆっくりで、他の臓器や組織に転移することはありません。
○悪性腫瘍
悪性腫瘍は増殖が速く、急に大きくなるものもあります。また、他の組織や臓器に転移することがあります。
【代表的な良性腫瘍・悪性腫瘍】
- 脂肪腫
中高齢のワンちゃんに多く発生する、脂肪組織由来の良性腫瘍です。皮膚のすぐ下の皮下組織で発生することが多いです。 - 乳頭腫
ウイルス性の良性腫瘍と、高齢のワンちゃんに見られる非ウイルス性乳頭腫があります。乳頭状やカリフラワー状のしこりが様々な場所にできます。 - 肥満細胞腫
皮膚型と内臓型があり、皮膚型の肥満細胞腫は悪性のことが多いです。 - 扁平上皮癌
四肢や陰嚢、鼻の周りに好発します。四肢の末端にできたものは転移しやすく、予後が悪いです。 - 黒色腫
メラニン産生細胞の腫瘍です。良性のものは真っ黒で盛り上がったしこりができます。悪性黒色腫はしこりの色が黒くない時もあり、口唇や口の中、四肢の末端に好発して進行が速いです。 - リンパ腫
皮膚型リンパ腫は、最初は皮膚炎のようなしこりができます。予後が悪い病気です。 - 乳腺腫瘍
避妊手術をしていない中年以降のワンちゃんに多く、悪性腫瘍である確率は50%です。
※ちなみにネコちゃんの場合、発生率はワンちゃんに比べて低いものの、悪性腫瘍である確率は80%です。
●動物病院の受診を急ぐケース
しこりに以下のような症状がみられるときは、悪性腫瘍の可能性もあるためできるだけ早く動物病院を受診してください。
- しこりが急に大きくなった
- しこりの表面が破れ、出血や膿の排出が見られる
- しこりをかゆがっている
- 悪性腫瘍にかかったことがある
しこりの診断と治療
動物病院で行う検査や、治療法をご紹介します。
●しこりの診断法
○身体検査
体重測定、体温測定、聴診、視診、触診といった基本的な身体検査を行います。
○細胞診検査、組織生検
しこりの一部を採取し顕微鏡で観察して、しこりの原因を推測します。細胞診検査は30分くらいで結果が出ます。ただし一部の細胞診検査や組織生検は外部に検査を依頼することもあるので、結果が出るのに数日かかります。
○腹部超音波検査、X線検査
悪性腫瘍が疑われると、超音波検査やX線検査で他臓器への転移がないかを調べます。
●しこりの治療法
検査でしこりの原因がわかったら、どのような治療を行うのかをご説明します。
○非腫瘍性のしこり、良性腫瘍
ワンちゃんがしこりを気にしている場合は切除したりしますが、基本的には経過観察が多いです。表皮嚢胞といった中身が角化物や皮脂物のしこりは、場合によっては中身を絞り出し、細菌感染が疑われる場合は抗生剤を投与します。
○悪性腫瘍
外科手術、抗がん剤、放射線治療をワンちゃんの状況に合わせて選択します。
- 外科手術
第1選択は外科手術です。全身麻酔下での手術が必要になります。 - 抗がん剤
完全に取りにくい場所にある悪性腫瘍や、他の臓器への転移を疑うとき、高齢で手術ができないときに行います。人間と同じく、ワンちゃんにも免疫低下や吐き気、食欲低下といった副作用があります。 - 放射線治療
術後の再発防止のためや手術ができないケースで行います。放射線治療は受けられる病院が限られており、費用も高額です。
しこり・腫瘍は上田動物病院にご相談ください
ワンちゃんのしこりには、非腫瘍性病変と、腫瘍性病変があることをご説明しました。その判断は難しいので、しこりを見つけたら1か月以内には動物病院を受診し診断してもらいましょう。日頃からワンちゃんをよく触り、病気の早期発見、早期治療につなげてください。
また、当院の院長は獣医腫瘍科認定(II種)の認定医です。腫瘍に関する豊富な専門知識を持ち、適切な検査・診断・治療の提供に努めています。
しこりを発見した場合は、当院までご相談ください。