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院長ブログ
八重と腫瘍③
更新遅くなりました。今回で一旦最後になります。
前回からの続きになります。前回はこちらから → 八重と腫瘍 八重と腫瘍②
今回の手術で腫瘍は取り切れていたので、残存しているであろう腫瘍細胞を根絶して完治を目指す目的で抗がん剤を使用することにしました。
がんによってはいくつか効果のある抗がん剤がある場合もあり、どのような抗がん剤をどのくらいの頻度で使っていくかは、様々なやり方があります。(残念ながら抗がん剤がほとんど効果のない腫瘍もあります)
腫瘍の状態、進行度、動物の状態、基礎疾患の有無、費用や時間がどのくらいかけられるかなどを総合的に判断し、飼い主様と相談しながらどのような治療を行っていくか決めていきます。
今回、八重に対しては、ドキソルビシンという血管肉腫に対して最も一般的な抗がん剤を使用して治療をしてくことにしました。
まず、ドキソルビシンの投与前に、血液検査で臓器の状態を評価したり、転移がないかエコーやレントゲンで検査していきます。また、このドキソルビシンという抗がん剤は心臓に対して毒性があるので心臓の機能が大丈夫かも確認しておきます。
幸い八重は特に異常がありませんでしので、ドキソルビシンの投与を行うことになりました。
ドキソルビシンは投与時にアレルギー反応が出ることがあるので、アレルギーを抑える注射と投与後の吐き気を抑えるため吐き気止めを事前に注射します。
ドキソルビシンは、急速に入れると毒性が強くなるので、1時間くらいかけて静脈からゆっくり投与していきます。
また、ドキソルビシンは投与中に血管の外に薬が漏れると、漏れた場所が壊死してしまい最悪の場合断脚が必要になることもあるため、投与中は、漏れてないか常に様子を見るようにしています。
投与後、抗がん剤が便や尿中に排泄されるので、投与してから48時間は便や尿の清掃を行う際はグローブを着用して行います。
また、体調の変化がないかはよく様子をみておかしなことがあればすぐに病院にご連絡ください。
投与して、1週間ほどで、副作用がないか、身体検査や血液検査を行います。
投与前の検査→抗がん剤の投与→投与後の検査という流れで投与を行い、今回はこれを5回ほど繰り返しました。
幸い投与後に多少の食欲低下はあったものの、それ以外は大きな副作用もなく無事投与を終えることが出来ました。
抗がん剤投与後
1~2か月毎に定期的に、身体検査を行い皮膚や皮下に腫瘍の再発がないか、また、心臓、脾臓、肝臓などに転移しやすい腫瘍なので転移がないかレントゲンやエコー検査を行っています。
1月現在、今のところ腫瘍の再発は認められていません。
このまま再発がなく完治してくれたらと祈るばかりです。
八重にまた、何か変化があったらブログで報告させていただきます。
腫瘍は人と同様にワンちゃん、ネコちゃんでも死因の第一位になっています。
治療にあたっては、動物の状態、年齢、腫瘍の種類や進行度、経済的な問題や時間的な制約などによってどれがベストはその子や飼い主様により異なります。
治療の選択肢は一つではなく、それぞれの状態、環境にあった方法が存在すると思います。
必ずしも抗がん剤や手術を行うことが正解ではないと思うので、飼い主様とよく相談し、その子と飼い主様にとってベストと思える治療を一緒に考えていけたらと心がけていきます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
病院の奥をウロウロしている八重を見かけたら声をかけてあげてください。