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コラム外科
冬に注意!猫と犬の変形性関節症(OA)の症状と対策
はじめに
寒い冬は、猫や犬にとって関節に負担がかかりやすい季節です。特に変形性関節症(Osteoarthritis:OA)は、高齢のペットや大型犬、猫によく見られる疾患であり、気づかれにくい慢性的な痛みを伴います。
本記事では、OAの症状、原因、治療法、そして冬場の具体的な対策について詳しく解説します。
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変形性関節症(OA)とは?
変形性関節症は、関節を覆う軟骨がすり減ることで、骨と骨が擦れ合い、痛みや炎症が生じる慢性疾患です。
OAは加齢に伴う変化として広く見られますが、猫や犬では飼い主が気づきにくい疾患の一つでもあります。
- 猫のOAの有病率
猫では約90%の高齢猫がOAを患っているとのデータがあります。痛みに気づきにくいため、「高い場所に登らなくなった」「寝ている時間が増えた」といった行動変化がOAのサインである場合も少なくありません。 - 犬のOAの有病率
犬では加齢や大型犬に多い疾患であり、特に体重の重い犬種や過去に関節のけがをした犬に発症リスクが高いとされています。犬での有病率は40%という報告もあります。変形性関節症は進行する疾患であり、適切なケアを行わないと運動能力の低下や生活の質(QOL)の悪化を引き起こします。
痛みに気づきにくいペットの関節炎の症状
猫や犬は、痛みを隠す動物です。そのため、飼い主が見逃しやすい初期症状があります。
以下の行動変化が見られた場合は、OAの可能性を考えるべきです:
- 猫の場合
- 高い場所に登らなくなった
- グルーミング(毛づくろい)の頻度が減る
- 歩き方がぎこちなくなる
- ソファやベッドに飛び乗るのをためらう
- 犬の場合
- 散歩を嫌がる
- 起き上がるのに時間がかかる
- 階段を上るのを避ける
- 関節部分を触ると嫌がる
これらの行動変化は、関節の痛みを和らげようとするペットの自己防衛反応であることが多いです。
冬場に関節炎が悪化する理由
冬の寒さは、関節の血流を悪化させ、関節周囲の筋肉が硬直しやすくなるため、OAの痛みが増す原因となります。
また、寒さによりペットの活動量が減ることが筋力の低下を招き、関節への負担がさらに増す悪循環を引き起こします。
OAの治療法と管理方法
変形性関節症の治療は、ペットの生活の質を向上させることを目的に行われます。
以下に主な治療法と管理方法を挙げます:
1. 体重管理
適正な体重を維持することで、関節への負担を軽減します。特に肥満の犬や猫では、体重を減らすだけでも症状の改善が見られることがあります。
2. 運動療法
適度な運動を行い、関節周囲の筋肉を強化します。ただし、無理な運動は関節に負担をかけるため、獣医師の指導のもとで行うことが重要です。
3. 環境の改善
滑らない床材を使用することは関節への負担を軽減します。特に犬の場合、「トーグリップス」(爪に装着する滑り止め)は、滑りやすいフローリング環境で効果的です。また、温かいベッドやラグを用意して、寒さから関節を守る工夫も必要です。
4. サプリメントの使用
- アンチノール
天然成分を使用した関節ケア用サプリメントで、炎症を軽減し、関節の可動性を向上させます。
5. 薬物治療
- リブレラ(犬用)
月に1回の注射で持続的な効果が期待できる治療法です。関節の炎症を抑え、痛みを軽減します。 - ソレンシア(猫用)
猫専用の治療薬で、炎症を抑える新しい治療選択肢です。 - NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
関節炎の痛みと炎症を抑える薬で、短期間で効果を実感できます。ただし、使用には獣医師の指導が必要です。
冬場の具体的な対策
暖かい環境を整える
- 室内温度を一定に保つ(20~25℃を目安)
- 暖房器具を活用して快適な環境を作る
- 厚手のベッドやクッションを使用する
滑りにくい床材を使用する
滑り止めマットやラグを敷くことで、関節への負担を軽減します。特に高齢犬や大型犬に効果的です。
定期的な健康チェック
関節炎の症状は進行するため、早期発見と適切な治療が重要です。定期的に動物病院で診察を受け、症状の進行を防ぎましょう。
当院での診療とサポート
当院では、犬や猫の変形性関節症に対する診察や治療、生活環境のアドバイスを行っています。飼い主様と一緒にペットの健康を支えるための最適なプランをご提案しますので、症状が気になる場合はぜひご相談ください。
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終わりに
変形性関節症はペットの生活の質を大きく左右する疾患ですが、適切なケアと治療を行うことで、症状を緩和し、快適な生活を送らせてあげることが可能です。
この冬、大切な家族であるペットの健康を守るために、早めの対策を始めましょう。